繊細なHSPさんには、看護師さんや介護士さんなど、人のお世話をする仕事が向いていると言われますよね。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
将来、福祉の仕事を考えているHSPさんや、今の仕事に悩みを抱えているHSPさんは、最後までお付き合いくださいね。
私は内向型のHSPです。
ある医療系国家資格を持ち、病院や福祉施設などで10年以上勤務しています。
高齢者に接することが多く、医療よりは福祉寄りの職場での経験が長いです。
そんな私が、HSPさんに福祉職が適職なのか、考察していきたいと思います。
HSPに福祉職は合っているのか?
結論から言えば、合っていると言えます。
しかし、福祉職も幅広く、仕事内容は多岐に渡ります。HSPさんの特性の強さ、性格もその人によって違いますので、必ずしも適職であると断言はできません。
ですが、HSPの特性が福祉職では強みになりやすいのでは、と感じています。
HSPの私は、福祉職に就いて10年以上、今も現役です。
福祉職ってどんなもの?
福祉職とは、社会的に弱い立場になりやすい人たちに対し、「その人らしく」生きていくことを支援する職業のことです。
厚労省では、福祉政策に「障害者福祉」「生活保護・福祉一般」「介護・高齢者福祉」の3つを掲げています。子供・子育てに関しての政策は、令和5年4月より、厚生労働省から「こども家庭庁」に移管されたとのことです。
よって、福祉職のキーワードとしては、高齢者、障害者、子供と言えます。
参考:福祉・介護|厚生労働省
福祉職の具体例
では、具体的にどんな職業があるのか紹介します。
この中に、私の本職がありますよ。
- 生活支援員:食事や排せつ、着替えなどの日常生活の介助や、職業訓練、レクリエーションなどを通じた日中活動の支援などを行う
- 就労支援員:就労が困難な人に対し職業的な訓練や指導をし、就労を支援
- 訪問介護員:ホームヘルパーと呼ばれ、利用者の自宅で介護を行う
- 介護福祉士:身体や精神に障害があることで日常生活に支障がある人に、心身の状況に応じた介護を行う
- 介護支援専門員(ケアマネージャー):介護におけるケアマネジメントを担う
- 相談支援専門員:障害者に対し「サービス等利用計画書」を作成し、定期的にモニタリングを行う
- 生活相談員:支援計画を立て、関係機関との連絡調整や社会資源の活用に向けた調整などを行う
- 社会福祉士:利用者の相談に応じ、福祉・医療保険サービスなど関係機関の連絡調整を行う
- 看護師:医療や福祉の現場で、医療的ケアや生活ケア・管理などを担う
- 理学療法士:運動療法・物理療法を用いて基本動作の能力を回復・維持するためのリハビリテーションを行う
- 作業療法士:創作や運動、仕事などの作業活動を通して、諸機能の回復・維持するためのリハビリテーションを行う
- 言語聴覚士:言語障害や嚥下障害(飲み込みの問題)などを抱えた人を支援する専門職
- 精神保健福祉士:精神に障害のある人の社会復帰促進事業所に通っている人を支援
- 児童指導員:発達障害や知的障害のある子どもの生活や学習の指導、保護者の対応、学校など関係機関との連絡調整を行う
- 児童発達支援管理責任者:児童発達支援事業所や放課後等デイサービスを利用している子どもの能力や希望に応じて「個別支援計画書」を作成し、療育支援に関する調整を行う
- 保育士:保育所をはじめ、児童養護事業所や乳児院、母子生活支援事業所、障害児事業所など、児童福祉事業所全般で求められる
参考:福祉の仕事21職種を紹介!仕事内容・やりがいと資格の取り方を解説|LITALICO キャリア
HSPの特性の中で福祉職に適するもの4つ
では、HSPの特性で、福祉職に適するものは何でしょうか?
私の経験から考察しますので、医療福祉寄りの見解になっていることをご了承ください。
些細な変化に気づく
相手のちょっとした仕草、態度、表情から様々な情報を得るため、利用者・対象者(以後、利用者さんで統一)さんの些細な変化に気付けます。
職種にもよりますが、基本的に同じ利用者さんに対し継続してサービスの提供や支援を行うため、些細な変化に気付けることはメリットです。
なぜなら、利用者さんは高齢者や障害者、子供などの場合が多く、自分の気持ちや体調など正しく伝えられる人ばかりではありません。
適切なサービスの提供、アドバイスなどができるよう、福祉職員が察してあげることが大事な場合が多々あります。
相手の気持ちが分かる
HSPは共感力が高く、相手の立場に立って物事を考えられます。
利用者さんは社会的に弱い立場になりやすい人が多く、さまざまな悩みや問題を抱えています。
察しが良いHSPさんは苦しい、つらい状況を理解する能力が高いため、利用者に寄り添うことができます。
深く考える
物事を深く考える特性は、利用者さんファーストのサービス・支援を考える上で強みになります。
「利用者にとって必要なサービスは何か?」「どうしたら今よりも自分らしく生きられるよう支援してあげられるか」など、ケースバイケースで考えていく必要があります。
人の役に立つことで自分の喜びになる
高い共感力のお陰か、HSPさんは人の役に立つことで喜びを感じる人が多い印象です。
利用者さんの笑顔が誰よりも嬉しいですし、自分の方が救われるHSPさんも多いのではないでしょうか。
「ありがとう」「痛みが和らいだよ」って言われると嬉しくなります。
福祉職に就く時の注意点6つ
福祉職は、肉体的・精神的にハードな仕事でもあります。
福祉職のマイナス面や注意点を挙げますね。
体力的にハード
特に利用者さんの生活をサポートするような看護師、介護士、保育士などは体力的にキツイです。
自分で動けず、全てに介助が必要な人、自分の状況が分からずお世話を拒否する人…利用者さんにはさまざまな人がいます。
どんな人が来ても支援・サポートをしなければなりませんので、体力的にハードです。
仕事を終え、帰宅したらソファーでぐったりなんて人も少なくないでしょう。
人間関係問題はある
どの職場で言えることでもありますが、人がいればそれだけ人間関係が生まれます。
職員同士や利用者さんとの関係で負担になることは多々あります。
たとえば対職員の場合、派閥や職種、雇用形態の違いなどの違いで、考え方の違いが結構明確に出る印象があります。
お互い尊重し合えれば良いのですが、なかなか難しいのが人間関係なのでしょう。
今まで経験したどの職場でも、人間関係の難はありました。
対利用者さんの場合、基本お客様として接するため、丁寧に接する必要があります。
しかし利用者さんも「人」ですので、色んな人がいます。
中には障害などのため適切なコミュニケーションが難しい場合もありますが、理不尽な言動、反応をされることはあります。
労働環境はよくないかも
福祉職は離職率が高いのも事実です。多くの職場では万年人手不足を嘆いています。
実際、突然「〇〇さんが辞める」なんて話はよくあることで、減った人員の分は、在籍メンバーでなんとかしなければなりません。
また、職員の入れ替わりも激しいので、連携ミス、コミュニケーション不足などからすれ違いが生じやすいのも事実です。
私は体力よりも職員間の人間関係で疲れます。
職種にもよりますが、福祉系の職場数は多く、人手不足もあり、転職はしやすいです。
人間関係や処遇などで不満があれば、次の職場へ移りやすいのはメリットと言えるかもしれませんね。
気持ちの切り替えが大変
利用者さんについて日々思いを巡らせるため、気持ちの切り替えに苦労することがあります。
HSPの特性として相手に共感しやすく、自分と他人の境界が曖昧になりやすい人もいますね。
福祉職では、利用者さんのプライベートな情報を扱うことが多かったり、利用者さん本人から話を聞いたりして、利用者さんの立場を想像する機会が多くあります。
中には家族関係が悪い利用者さんがいますので、そんな時は感情移入してつらくなる時があります。
たくさんの利用者さんを抱えることも多いので、ある部分ではドライさも必要なのですが、HSPには難しいこともあるんです。
HSPの特性が評価されないことも
HSPの特性である、共感、丁寧な対応が職場に歓迎されるとはかぎりません。
なぜなら…
- 福祉職と言えども「仕事」だから
- 人手不足ゆえに業務効率を優先
- 特定の利用者さんばかりに優遇は不平等
このような現実があるからです。
利用者さんに共感する、利用者さんファーストの支援計画を立案する、時間をかけて丁寧に対応するなどは、HSPの特性を生かした強みであることに違いありません。
しかし、人手不足なのに時間をかけた対応をしていたら、仕事が終わりませんし、同僚にしわ寄せがいきます。
職場の利益より、利用者さんの利益ばかりを追求すると、経営者側から良く思われないこともあるでしょう。
他職種連携に苦労する
福祉職では、各々が専門性を有した職種ですので、職種によって考え方、捉え方が違うという印象が強くあります。
違う人種なのではないか?と思うくらい話が通じずに頭を抱えたこともあります。
職種ごとに専門性に誇りを持ち、信念を持って職務に当たることは素晴らしいことではあるのですが、多職種がいる職場だと壁や溝は結構感じます。
福祉職で悩んだ時の解決案4つ
福祉職に就いたい場合や、現在福祉職に就いているけど悩んでいる人に対し、解決案を考えてみました。
資格を取る
福祉職に就きたいなら、資格を持っている方が強みになります。
- 利用者さんに、より専門的な支援ができる
- 有資格者でないと作成できない書類や加算取得などで、職場に貢献できる
- 就職の際、優遇される
- 資格手当がもらえる
このように資格があることで、利用者さん、職場への貢献度が高まり、自分が優遇されるなどのメリットがあります。
働きやすい環境へ改革していく
働きにくいのであれば、自分で働きやすい環境にしていく努力も必要です。
福祉職だけのはなしではありませんが、職種毎の考え方の違い、古くからの慣習、派閥など、実際のところ結構あります。
また、職場によってもカラーや働きやすさはだいぶ違いがあるように感じます。
今の職場は、結構古くからの慣習・伝統に引っ張られ、今の時代に合っていないなと思っていました。
少しずつですが、新しいことを取り入れ始め、業務改善も進んでいるなと感じています。
HSPの特性上、
- 争い事が苦手で反対意見や自分の意見を主張できない
- 「なぜ?」を追求して深く考え込む
- 共感力が高く、利用者さんに寄り添い過ぎる
など、苦しくなることがあるでしょう。
深く考えない、流す、ことができれば良いのですが、HSPさんには難しいところですよね。
信頼できる上司や、話しやすい同僚など、自分の思いや意見など、少しずつでも発言していくと良いですよ。
私も課内のミーティングでは意見を言うようにしています。
無駄な業務を削減しつつ、より良いサービスを提供していけるのがwin-winだと思っています。
自他の境界をしっかり持つ
HSPさんは共感力の高さや観察力・洞察力の高さから、相手の気持ちに寄り添い過ぎるところがあります。
福祉職は弱い立場の人へ支援やサポートをするため、相手の気持ちを汲むことは非常に大切であることは事実です。
しかし、あまり深入りし過ぎると、自分もしんどくなってしまいます。
ある面では、「仕事だから」と客観的に、冷静に利用者さんのことを見られると良いでしょう。
気持ちの切り替えが苦手なHSPさんは多いですが、仕事は仕事、プライベートはプライベートと一線を引けると良いですね。
転職もあり
HSPの特性と福祉職の親和性は高いと言えますが、仕事は福祉職だけではありませんので、無理して続ける必要もありません。
HSPさんにも色んな人がいますので、合わない人には合わないと思います。もっと自分を活かせる仕事に就いた方が幸せになれるのではないでしょうか。
確かに福祉職は弱い立場の人を救う、誰かの役に立つ仕事ではありますが、キレイ事だけではありません。心身共にハードな仕事であるのは前述した通りです。
既に福祉職で働いている人で色々悩みを抱えているのなら、他の職場に移るのも良いかと思います。
職場によってカラーがだいぶ異なりますので、今よりも良い環境で働ける場所があるかもしれませんね。
ちなみに私は、今の職場が3ヶ所目です。
まとめ
HSPに福祉職が合っているのかを、私の経験から考察しました。
私の経験上、HSPの特性は福祉職に合っていると結論づけました。
しかし、HSPと言っても、人によって特性の出方、強さは違うでしょうし、みな性格も違うでしょう。
ですから、「全HSPさんに福祉職がオススメ!!」と言うつもりはありません。
ただ、将来どんな仕事に就こうか、人の役に立つ仕事がしたいな、と思っているのであれば、挑戦する価値はあると思います。
文中でも紹介しましたが、職場によって伝統やカラーが全く違います。
なので、1ヶ所の職場で合わなかったからと言って、「自分の能力が低い」「私はダメだ」なんて思わないでくださいね。
自分で言うのもなんですが、福祉職はキツイですがやりがいのある仕事です。
福祉の世界で活躍するHSPさんが増えたら、私も嬉しく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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