東野圭吾作品の【クスノキの番人】を読んだので、徹底書評したいと思います。
多少ネタバレ要素があるので、注意してくださいね。
クスノキの番人|書籍の基本情報
今回紹介する【クスノキの番人】の基本情報を紹介します。
作品名 | クスノキの番人 |
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著者 | 東野 圭吾 |
艇か | ¥900+税 |
出版社 | 実業之日本社 |
出版年月日 | 2023.4.15 |
ページ数 | 496ページ |
主な登場人物も紹介します。
直井 玲斗:主人公。クスノキの番人を通し成長していく。
柳澤 千舟:玲斗の伯母。ヤナッツ・コーポレーションの顧問。
佐治 優美:父の不倫を疑い、探っている。父がクスノキに祈念していることから、玲斗と出会う。
クスノキの番人|あらすじ
主人公の玲斗は、工作機械を扱うメーカーで働いていたのだが、「売る予定だった機械に欠陥があることを客に漏らした」という理由で解雇された。
解雇に納得のいかない玲斗は、腹いせに高価な機械を盗もうと、倉庫に忍び込んだのだが、見事に失敗し、掴まってしまった。
罪状は「住居侵入・器物破損・窃盗未遂」であり、玲人は、起訴されるのを待つことになった。
そこに、依頼人不明の弁護士が現れた。
その弁護士から「依頼人の指示に従うのなら、釈放されるように動くがどうする?」と話を持ちかけられた。
依頼人は誰なのか、依頼人の指示とは何なのか、全てが分からずじまいではあるものの、人生に絶望している玲斗は、コイントスにより弁護士の話を受け入れることにした。
それから間もなくすると、玲斗は本当に釈放された。
その後、依頼人の元へ行ってみると、依頼人は伯母の柳澤千舟であることが判明。
そして、千舟からの指示とは、【クスノキの番人】になることであった。
最初はクスノキの番人と聞いても「??」でしたが、クスノキを訪れる人など、さまざまな人々との出会いによって、徐々にクスノキが宿す力、クスノキの番人の意味を知り、玲斗自身も成長していく。
クスノキの番人|感想
最初は主人公の玲斗と同様に、「何が何だか分からない」と頭に「?」が多く浮かんだ状態で読んでいました。
正直、いつから面白くなるんだ!?なんて思いながら(笑)
玲斗の人生は苦難が多く、また最初のうちは千舟との関係も距離があって冷たささえ感じるような感じだったので、なおさら内容に魅かれなかったんですよね(すみません)。
しかし、徐々にクスノキの力、秘密が分かり始めてくると、そのファンタジー性に惹かれ始めました。
こんな話、現実には無いと思いつつも、惹きこまれていきました。
もともと私がスピリチュアルなど目に見えないもの、精神世界の話が好きというのもあるかもしれませんけどね。
また、自分の出生に負い目を感じて、母を亡くし、仕事もクビになりで人生に絶望している若者が、徐々に光を取り戻していくところもイイなと思いました。
玲斗の人間的な成長にも心打たれました。
最後の方は泣きました。
クスノキの番人|おすすめポイント
クスノキを読んでみて、私がおすすめだと思ったところを紹介します。
※ネタばれ注意
クスノキの力
この巨大クスノキには、人の念を預かり、血縁者のみにその念を伝える不思議な力があります。
実際にこの話のモデルになった事例があるのかは分かりませんが、「なさそうで、実はあるのでは!?」と思ってしまうほど、惹きこまれました。
スピリチュアルやファンタジーが好きな人にはおすすめです。
玲斗の成長
序盤の玲斗は、なんだか可哀相になるくらい、苦難ばかりで人生に絶望しています。
まず、玲斗には、生まれながらに父親がいません。
実は、母の美千恵は既婚男性と恋に落ち、玲斗を宿すのですが、認知はしてもらえませんでした。
しかも母の美千恵は若くして亡くなってしまい、玲斗は祖母に育てられました。
貧しいながらも成長した玲斗は、あるメーカーに就職するのですが、クビになってしまうんですよね。
さらに腹いせに企んだ計画が失敗に終わり、起訴されてしまい、まさに絶望の渦中にいた訳です。
そこで千舟が手を差し伸べ、玲斗を救いました。
そしてクスノキの番人という役目を与えます。
最初は礼儀や敬語も知らない玲斗が、色んな思いを抱えながらも少しずつ成長していく過程は、応援せずにはいられなくなります。
ストーリー終盤では、自分の意見を堂々と会社役員の前で発言している姿は、とても頼もしくなったなぁと親戚のオバサン視点で感情移入していました。
千舟との関係性
初めて会った千舟に「伯母だ」と言われても、すぐには信じられませんし、「どうして自分なんかのために弁護士を?」と不信感さえ持っていた玲斗。
千舟のこと、千舟と母・美千恵や祖母・富美とのこと、ヤナッツ・コーポレーションのこと、月郷神社やクスノキのこと…本当に少しずつですが、知っていきます。
そしてクスノキに関わる人々との関わりによって、千舟との信頼関係が育まれていくのです。
最初はツンと冷たい千舟でしたが、徐々に「家族」になっていくところに温かさを感じました。
まとめ
東野圭吾著【クスノキの番人】のあらすじ、感想、おすすめポイントを紹介しました。
現実にはありえないようなあるような、絶妙なファンタジー感に惹きこまれる作品でした。
ファンタジーと言っても、フワフワしたストーリーだけでなく、青年の成長、信頼関係の育みなどの実際にありそうなヒトの温かみを感じることもできます。そこに社会の厳しさ、憤りなどがスパイスとなり、ストーリーを引き締めています。
ドキュメンタリーではないけれど、ファンタジーテイストなヒューマンドラマが好きな人にはおすすめの作品です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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